こんにちは、まりモグです。
この秋、社会人になって初めて2週間のお休みをもらい、旅に出ました。いつも欧米人から「3〜4日の休暇? そんなの"ヴァカンス"って言わないよ」といじられてきましたが、これぞ本物のヴァカンス!
活用したのは特典航空券(マイル)で行く「スター アライアンス世界一周」プラン。太平洋、大西洋を飛行機を利用して横断する必要がある、途中降機は8回まで、などいくつか条件がありますが、通常の航空券よりうんとお得に世界各国を回れます。
まずは肩慣らし、でアジアに立ち寄ることにしました。行ったことのある国がいいだろうと選んだのはシンガポール。行ったことがあると言っても、最後に訪れたのは小学生の頃......しかもその時発熱し、ホテルの部屋からマーライオンを眺めて終わったのでほぼ初に等しい。
目的は、こちらに住む友人たちとの再会と、最高のホテルステイ。シンガポールは地震も少ないからか挑戦的というか奇抜な建築が多く、ホテルも建築をウリにしたものが多い印象。新しいホテルも毎年できているので、好奇心がくすぐられます。
......が、迷わず選んだのが、ラッフルズホテル。シンガポールといえば、誰もが思い浮かべる老舗です。前回は外来利用で宿泊はできなかったので、いつかは泊まってみたい、と長年の夢でした。
トランクの中でいちばんキレイめのワンピースを着て、いざチェックイン。2019年に大規模なリニューアルを終えたラッフルズホテルはどこを切り取っても美しい! 宿泊棟だけでなくショップやレストランが並ぶアーケード街、大きな庭も併設し、かなり広い。タクシーで降ろしてもらった場所が建物の裏側にあたるアーケード街で、そこから館内へ入ったのですが、やはり宿泊者たるもの白亜の建物を前面に感じるメインエントランスから入るべし(反省)。
ホテルの伝統、ターバンを巻いたドアマンに迎えられ中へ入ると、清楚かつ華やかな空間が広がります。胡蝶蘭など南国らしい花に囲まれ、アフタヌーンティーをしているシンガポールマダムたちもちらほら。今日から2日間、この空間に身を置けるなんて。胸が高鳴ります。
着いて早々に向かったのがロングバー。「シンガポール・スリング」の発祥地として有名すぎるバーです。100年以上社交場として活用されてきただけに、店内はさまざまな国のゲストが集まり、活気にあふれたインターナショナルな雰囲気。メニューに目を通し、ちょっと悩む素振りをしたものの、心はシンガポール・スリング一択。1915年にこの地で生まれたカクテルは、ドライジンとチェリーリキュールをベースに、パイナップルジュースを加えた南国フレーバー。当時は女性が公の場でお酒を飲むことに抵抗があったそうで、ジュースに見えるカクテルを、と生み出されたとか。
おつまみのピーナッツの殻を床に捨てるのは、このバーのお作法(?!)。例にもれず、私も大量に殻を落としました。楽しくて、つい必要以上に食べてしまうので注意が必要!
実はこのシンガポール・スリング、宿泊者にはウエルカムドリンクとして一杯無料で提供されます。ロングバーで飲んでもよし、部屋やプールで飲んでもよしと聞いて、そのあとプールサイドでもいただきました。泳いだ後にいただくそれは爽やかな味で、アルコールが入っていることを忘れさせるほどスルスルと飲めてしまいました。優しい甘酸っぱさが旅の疲れを癒やしてくれます。
念願のシンガポール・スリングデビューのあとは夕食へ。ラッフルズホテルの魅力のひとつがグルメ。インド、中華、薪火料理といくつものレストランを擁し、たとえ長期滞在でも飽きさせないほど充実しているのです。迷いに迷って、一夜目は「藝 yì by ジェレーム・レオン」をセレクトしました。小中学校を中国で過ごしたので、旅の途中でも中国料理を食べなければ落ち着かない体質。少々早いですが1カ国目で駆け込みました。
草木&花のインスタレーションが素敵なアプローチを抜けると、モダンなインテリアが迎えてくれます。内装が好みだと、必然的に料理への期待も高まります。
窯焼きチャーシュー、揚州炒飯、モツ入り薬膳スープなど、どれも広東料理らしい旨味があるのに淡くて繊細で日本人好みの味。シグネチャーのエビ料理は新感覚でした。エビの紹興酒漬け(酔っ払いエビ)はよく食べますが、エビの甘みと食感を残しながら紹興酒がプンと香り、これまで食べたものとはひと味もふた味も違います。北海道産のウニがアクセント。シンガポールは地元食材が少ないものの、貿易大国だけに世界各地から新鮮な食材が豊富に届くので、食のレベルがやっぱり高い! 「アジアのベストレストラン50」でもシンガポールのレストランが上位を占めていますが、納得です。
大満足の広東ディナーを終えたら、いよいよ部屋へ。ラッフルズホテルはすべてがスイート仕様。今回泊まったパーム コート スイートは、名前のとおりホテルの中庭に面した部屋。ユニークなのが、プライベートテラスはないのですが、ドアを開けると共有ベランダが広がっていること。常連と思わしき他のゲストは、このベランダで朝食をとっていました。こちらは初心者なので、手入れが完璧に行き届いた中庭と真っ白な建物のコントラストを眺めながらティータイム。バトラーがいるので頼めばお茶を入れてくれるのですが、緊張して身の回りのことはすべて自分でやってしまいました......。
2日目のラッフルズホテルはティフィンルームでスタート。ラッフルズホテルの始まりは1887年ですが、そのすぐ後92年にティフィンルームは創業。このホテルのメインダイニングで朝食をいただきます。
ティフィンルームは、王室料理をベースにした北インド料理。朝は自家製パンやサラダ、オムレツなど西洋料理がメイン(写真のラクサやカヤトーストなどシンガポール料理もあり!)なので、気になって夜に再訪問。偶然にもこの日は、翌日の訪問地・バンコクから来た星付きインドレストラン「Haoma(ハオマ)」のシェフとのコラボメニューでした。ティフィンルームからは、ダックカレーやビリヤニ、タンドリーチキン、ナスのゴマチャツネ添えが供されました。東南アジアの気候×スパイスが利いた洗練インド料理は、最高のマリアージュ!
シンガポール最後の夜、締めくくりはやっぱりバー。ロングバーも再訪したかったのですが、エントランスの脇にある「ライターズバー」が気になりやってきました。これまでサマセット・モームなど数多くの作家がラッフルズホテルを訪れましたが、それを象徴するようなバーです。オーダーしたのはシグネチャーの「ミリオンダラーカクテル」。「ラッフルズ1915ジン」にヴェルモット、パイナップルジュース、卵白などが使われ、奥行きはありつつスッキリした口あたり。大人な雰囲気とおしゃれなカクテルですっかりいい気分。
最高のロケーションでシンガポール最後の夜を締めくくりました。
今回、久々のシンガポールだったので街歩きやバー回りももちろん楽しみましたが、ラッフルズホテルの自然体であたたかなおもてなし、中庭から吹く風と南国の開放感、種類豊富で洗練されたグルメ、おしゃれなで大人なバーと、シンガポールの魅力がこのホテルにはすべて詰まっていました。次回は一歩も外に出ず、完璧なおこもりステイを目指したい! なんと27年には東京に初上陸するというから、こちらも楽しみ。
最終日の朝、ラッフルズホテルのハイヤーで空港へ送ってもらい、この最高の満足感を胸に、次の旅先バンコクへ向かいました。
1 Beach Road, Singapore 189673
(+65) 6337-1886
料)パーム コート スイート1,470SGD〜
https://www.raffles.com/ja/singapore/
幼少期よりアジア、欧米、太平洋の島々などを旅し、モンゴルの羊鍋からフランスのエスカルゴまで現地の料理を食べ歩く。特に香港は、多い時で年4回のペースで通うほどの“香港迷”。食べ過ぎ飲みすぎがたたり、28歳で逆流性胃腸炎を発症。2021年にJ.S.A.認定ワインエキスパートを取得。